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障がい者採用における留意点(その3)

イメージ写真、新入社員

前回、全盲の視覚障がい者の事例を記しましたので、引き続き全盲の方を例にとります。
今回の考察では、業務を細かく分解し、その業務を担当することが障がい内容の観点から可能かどうか、また適切かどうか考えてみたいと思います。

採用業務の中の新卒採用業務を例にとってみます。
一般的な新卒採用業務のおおよその流れは、

  1. 採用数、募集要項の決定及び資料作成
  2. HPや外部求人媒体への求人情報の掲載
  3. 前年インターン生への連絡
  4. 学校訪問
  5. 会社説明会の実施
  6. 書類、面接、実技等選考
  7. 選考結果通知
  8. 内定式の開催
  9. 入社式の開催
  10. 新人研修の実施
  11. 配属先の決定

であろうと思います。

この流れの中で発生する実務を作業種別で分類すると、

① 判断を行う業務
・選考の合否判断
② 内容を考えて資料を作成する業務
・HP掲載資料、採用パンフレット、新人研修資料等の作成
③ 営業系業務
・学校訪問
④ 連絡業務
・応募者、インターン生、学校等への連絡
・HP制作等外部委託業者への連絡
・社内関連部署への連絡
⑤ 入力業務
・各種情報入力
・アンケート入力
⑥ 軽作業
・会社説明会、内定式、入社式、新人研修等の会場設営
・資料のファイリング

等に分けることができます。

上記の作業種別の中で、全盲の方が従事するのは困難または適切ではないと考えられるものはどれでしょうか?

  • 上記⑥は不可能とは言いませんが、作業効率は悪く危険を伴う恐れもあるため難しいと言えそうです。
  • 上記②は作成補助者が必要と思われますが、資料の構成や内容を考えることは十分可能です。
  • 上記③は移動の際のサポートがあれば十分可能ですし、学校側にも良い企業イメージを持ってもらえそうです。
  • その他①④⑤は業務上多少の工夫が必要かもしれませんが、基本的には従事可能な作業と考えられます。

要するに全盲の方であっても採用業務の内の大半の業務に従事することが可能と考えられます。この良い事例が前回に述べたAさんです。

イメージ写真、キーボードで入力している手のアップ

このように作業を分解すると本当にその業務に従事することが可能かどうか明確にすることができます。
それでも「いやいや現実はそうは甘くはない」という声も聞こえてきそうですが、そこは論理的に考えてみましょう。
まず、PCの入力スピードですが、そもそも全盲の方はブラインドタッチです。
PC操作に慣れている方は筆者とは比べ物にならないくらい早いスピードです。
(ちなみに筆者は1,000文字/10分程度です)

「でも誤字脱字はあるのでは?」と問われると、確かに全くないとは言えません。
視覚障がい者が作成した履歴書や職務経歴書を見ても1か所くらいは誤字脱字が散見することがあります。
ただし晴眼者でも誤字脱字は見受けられます。私も急いでメールを送信する場合など、つい見直しが不十分になってしまい、送信後に「しまった!」というときがあります。
少し脱線しますが、筆者が若いころ作成した書類は声を出して確認するよう上司より指導を受けました。目視だと、正しく書いたつもりで確認してしまうからです。
その点、視覚障がい者には音声読み上げソフトという武器があります。
常に耳で聞いて確認するため、誤字脱字を防ぐことにもつながっているわけです。
このように考えた場合、「視覚障がい者だから誤字脱字が多い」というのは先入観に過ぎない気がします。
筆者の経験上、有意差があるとすればそれは視覚障がいの有無によるものではなく、読書量による差の方がはるかに大きいように思います。

イメージ写真、新入社員

「でも資料の体裁までは整えられないだろう?」という声も上がりそうです。
ご懸念はもっともです。
Wordの文字の大きさ等の書式設定や画像やイラストの挿入、Excelのグラフ作成等で完璧に体裁を整えることは難しいかもしれません。
筆者は単純に考えすぎかもしれませんが、そのような体裁を整える作業は他のメンバーが担当すればいいと思います。
前々回に述べた通り、人間には得手不得手があります。
筆者は全ての作業を一人で行う必要性はないと考えます。組織内のメンバーそれぞれの特性を活かし、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮できるようマネジメントすればよいのではないでしょうか。
少ない人員の中でやりくりしないとならないマネージャーの方々は本当にたいへんだと思いますが、適材適所に人員を配置し、健常者も含めた各メンバーが最大のパフォーマンスを発揮できる環境を作ることは組織の要諦といえます。

2回にわたり全盲の方を例にとりましたが、他の障がい者に関しても同じ視点で考えると従事可能な業務は相当数に達するはずです。
数十年前には男性上位で考えられていた時代がありました。
しかし現在、性差で優劣があると考える方はほぼ存在しないと思います。
同様に障がいの有無で優劣があると考えてしまうことも時代遅れとなるべきですし、早くそのような社会を皆様と共に作りたいと思います。